2016-01-01から1年間の記事一覧

万引き観光

☆何年か前に見た、非常に嫌な光景の話である。 ☆夜、近所の小さなコンビニに入ると、すれちがいに夫婦らしき小柄な年配の男女二人連れが店を出るところだった。見た目からの推測だが、彼らは中国語を話すひとたちに見えた。その夫婦はそれぞれの手に一つずつ…

家庭内ロックンロオラア誕生前の長い夜の始まりの日

☆30年前の今日、私の人生の中心がロックンロオルになった。ある人物に出会い、魅力的なロックンロオルを浴びるように聴かせてもらい、それらを片っ端から気に入って四六時中聴くようになったのだった。まるで水をぶっかけられたスポンヂのごとく、「あ!」と…

百貨店のない町になるとき

☆十代のころ、絵の具のチューブに入ったド紫色の口紅を買った百貨店は、だいぶ前にこの町から撤退した。そのときに初めて百貨店の閉店セールというものを体験した。閉店前日だったと記憶しているが、これがこの町かと思うくらいの人混みだった。それとは対照…

二度と行けなかった場所の話

☆免許とりたてのころ、夜ごと浮かれて父の車を駆っては市内をぶらぶら散歩していた。車はどんどん運転しろという父の方針を最大限悪用してのことだった。パワステでもないマニュアル車、しかも典型的なおっさん車の色・形であったが、うら若かった私には初心…

はじめての夜道のひとり歩きのこと

☆あれはおそらく中学一年の夏休み、近所の盆踊りの夜に人生初の「夜間外出」の許可がおりた。独裁者気取りの両親の気まぐれだ。 ☆私は夜の外出に憧れていた。夜に関する知識といえば、黒い空に月と星があることくらいだったが、それ以外の「夜」も見てみたか…

祖母の茶飲み話

☆祖父もだが祖母も喫煙者で、夫婦そろってフィルターのない「しんせい」を吸っていた。祖父母は喫煙することを「煙草をのむ」といい、祖母はよく煙を輪っかにして幼い私を楽しませてくれた。受動喫煙上等であった。 ☆誰か彼かの命日が来るたび仏壇にお菓子な…

こんな夢を見た

☆夜A ◆故郷の小学校を訪ねると高学年用の玄関が図書室になっていた。下駄箱はすべて本棚に置き換えられ、机も椅子もなく床に座って本を閲覧するスタイルだった。 ◆遠くに住む一つ年上の友達・Kちゃんがランドセルを背負ってはるばるやってきた。私は彼にネ…

朝から拷問するお父さんのいる風景

☆いつもと違う位置に置かれた食卓には私ひとりだ。機械的に朝食を飲みこむ私の背後、カアテンを引いたままの薄暗い部屋では、小さな子が「保育所へ行け!」「なぜ保育所へ行かない!」と罵声を浴びせられ、平手打ちの連打を喰らい布団の上を右に左に転がされ…

パパママ・ガイキチ

☆つきあいきれないのと、かかわり合いたくないのとで、小学4年あたりから私は父を避けるようになっていった。 ☆そうすると、なぜ自分だけを疎外するのか、ときいきいした非常にヒステリックな声で父が怒鳴る。静まり返る食卓。不味い食事が余計に不味くなる…

若気の至り(若き野郎ども篇)

☆とあるお正月、地元の百貨店の地下通路のベンチで休憩していた。そこを通りかかった中学生男子二人組。一人が鞄から空のペットボトルを取り出し「ぜんぶ飲んじゃった…。」と相手に見せた。見せられたほうはさっそく鞄をごそごそし、自分のペットボトルのお…

萌え萌えと、女装できないおばあさんの明日

☆十年ほど前の話である。市中心部の横断歩道を渡っていたところ、男子高校生らしき声で「もーえー!!」と叫ぶのが聞えてきた。どうやら自転車を飛ばしながらのようだった。その場で膝小僧靴下(いわゆるニーハイ)を着用していたのは私ひとりだったから、も…

家系病はオカルトの病(笑)

☆私の母は幼少のころエクソシストのお世話になったことがある。普段は食の細い彼女が、食べても食べても強烈な飢えを感じてひたすら食べ続け、その様子を不審に思った彼女の祖母(つまり私の曾祖母)が知り合いのエクソシストのもとへ連れて行ったのだった。…

若気の至り

☆女子高生のA子ちゃんとB子ちゃんが雑談していて、A子ちゃんがC子ちゃんの兄をさりげなく「アーニー」と称していると、B子ちゃんが「C子ちゃんのお兄ちゃんて外人なの?」と真顔できいたという話をA子ちゃんがしていたのは30年ほど前になる。私がA子…

カラスの群れと鉄砲撃ち

☆田舎暮らしをしていたコドモのころのこと、自宅の正面からまっすぐ延びる道路の行き止まりに養豚業を営む同級生のY君の家があった。 ☆ある日、Y君宅の屋根の上をおびただしい数のカラスがぎゃあぎゃあ鳴きわめきながら飛び回るのが見えた。ときおり変な音…

性的な意味でふざけた田舎の人々

☆まだ田舎に住んでいたころのこと。あるとき、私は居間で上半身裸だった。母に着替えさせられていたようだ。そこにはなぜか父もいた。彼はにやにやした顔で私の左の乳首をつんつんつまみ、「これ何ァに。これ何ァに。」とせかすような口調で言った。母はにや…

田舎は性犯罪のパラダイス

☆田舎は性犯罪のパラダイスである。コドモからオトナまで、性別が男でありさえすれば24時間すけべヅラをしていてもとくに問題視されないし、ひとの目を盗んで猥褻で卑劣な行為におよんでも「あいつはすけべ」と噂される程度で済む。あの土地の性的なからかい…

阿佐ヶ谷のありん堂のみそ柏はすばらしい

☆そのむかし、阿佐ヶ谷で暮らしたことがある。JR阿佐ヶ谷駅北口を出て左、スターロードという商店街というか飲み屋街のいちばん奥にある和菓子やさんの「ありん堂」がなにより好きだった。いまでもお店で売られていたいろいろなお菓子が腦裡をよぎって困るほ…

用務員さん24時

☆私が通った保育所には、ひよこ組(3歳児)、りす組(4歳児)、ばんび組(5歳児)、きりん組(6歳児)の各教室、コドモたちが体を張って遊ぶおゆうぎ室、それに用務員さん一家の暮らす部屋があった。用務員さんのお子さん、私よりひとつかふたつ年上の女…

蜂蜜やさんと花とミツバチ

☆私との続柄は不明なのだが、むかしむかし、親戚に養蜂業を営む男性がいたそうだ。そのひとが亡くなったとき、お葬式に複数の見知らぬ若い女性が小さなコドモを連れて現れコドモを認知してほしいと言い出し、親戚一同仰天したという事件があった。けっこうな…

清志郎がぶっ飛ばした夜

☆忘れもしないあの騒がしい夜のこと、開口一番、彼は叫んだ。 「相変らず人口少ねえな、旭川!!」 そして 「コドモいっぱい作れ!!」 と続けた。 RCサクセションが “来日” しているというのに大ホオルの客席の半分以上はなんと無人だったのである。 当時まだ小…

馬車がやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!

☆幼いころ、お風呂のお湯は釜をつなげた浴槽に水を入れて湧かしていた。湧かす燃料は石炭だった。 ☆石炭はどうやって家に運ばれてくるか。馬車である。「1トン、お願いします。」などと電話で頼めば、石炭やさんのおじさんが馬車を駆って、車道のど真ん中を…

なんでも代行

☆食餌制限があるので誰でもいいから飲食代行をお願いしたい。私の代わりにアイスクリームやソフトクリーム、パフェ、かき氷、ソーダ味のガリガリ君、ダブルソーダ(以上は溶ける前にさっさと食べ終ることが重要です)、プリン、シュークリーム、キットカット…

祖父の酒飲み夜話

☆下っぱの歩兵として旧満州に入った祖父は、来る日も来る日も背嚢(はいのう)を背負い一日じゅう歩かせられ、足の裏に水ぶくれができるとヨードチンキをしませた糸を針に通し水ぶくれを刺し貫かれる日々に「軍隊は駄目だ。」とつくづく思ったという。 帰国…

私のGR

☆GRと白黒フィルムの日々がひどくなつかしく思いだされるときがある。右手がGRの鋳物の感覚を恋しがって困ることもある。縦に構えればあつらえたようにぴったり親指の位置にシャッターがあったのだ。架空のGRでもいいから手に持ちたい。 ☆あのGRで何枚の写真…

お江戸の桜

☆いまごろお江戸ではきっと、ソメイヨシノや何とかヤマザクラはおおかた散ってたくさんの八重桜が咲いているころだろう。お江戸の八重桜はふんわりと大きな花で、見るたびにジャンプして喰いつきたい衝動に駆られたものだった。八重桜は、桜餅によく似ている…

人生に疲れた9歳が考えたこと

☆9歳、小学3年のとき、私はすでに青息吐息だった。疲れた。とにかく学校だけでも休ませてくれ。いますぐ休むことができないなら、義務教育の間はなんとか我慢するから、そこから先はしばらく休ませてくれ。そうでないとその先どうすればよいのかわからない…

お葬式もお墓も仏壇もぼんさんも

☆私が死んだら適当に焼いて、残った骨はごみとして捨ててもらえればありがたい。 もしもそれが法律上の問題でかなわなければ、手間をとらせて申し訳ないが、骨を粉砕して道路でも空き地でも道ばたでも川でも、とにかくそこらへんに無造作にばらまいてくれれ…

私の5年前

☆あの日あのとき、私はアパアトの7階の自室に一人でいた。まず壁の一部、天井近くから「めりっ」というすごい音がしたかと思うとやがて部屋がゆっくりと揺れ始めた。地震がくると私は必らず波乗りのポオズをする(実際の波乗りは未体験)。経験上これで震度…

東京大空襲と祖父

☆前にも書いたが、祖父は終戦前後の東京で警察官をしていた。私が小さいころから、大きくなっても、晩酌の席では警官になるまえの軍隊での話や警察時代の話を聞くことができた。酔った祖父は同じ話を何度もくりかえし、私はその都度いま初めて聞いたかのよう…

ナンパという不可思議な行為

☆「僕、これから家で晩ごはん作って食べるんですけど、来ませんか?」といかにも真面目そうなひとに真顔で言われた夕暮れ時。一面識もないひとである。突然のことにぽかんとしたがもちろん即座に断った。相手はあっさりひきさがってくれたが、自宅での食事に…