若気の至り

☆女子高生のA子ちゃんとB子ちゃんが雑談していて、A子ちゃんがC子ちゃんの兄をさりげなく「アーニー」と称していると、B子ちゃんが「C子ちゃんのお兄ちゃんて外人なの?」と真顔できいたという話をA子ちゃんがしていたのは30年ほど前になる。私がA子ちゃんと会ったのはその一度だけだし、会ったなりゆきももう覚えていない。思えば十代は一期一会の連続であった。

☆十代も後半のころ、ヤンキーのお嬢さん・Mちゃんが「売春」を「スプリング・セール」と勝手に翻訳していた。彼女は「文金高島田」を「きんしんたましらず」と涼しい顔で言ったりもするひとだった。ヤンキー活動が過ぎる彼女と私との接点はあまりなかったが、こういったことは未だに記憶に残っている。

☆中学時代のある日、クラスメエトのM君、S君、Yちゃんと放課後に雑談したことがあった。教室にはほかに誰もいない。M君は一心不乱にミルキーバーを舐めて凶器のように尖らせご満悦だった。そのM君が突然「おえっ!」みたいなことを叫んで、くわえていたミルキーバーを急いで口から出した。ほかの三人は驚いて「どうしたの?!」などと騒いでいると、M君はますます鋭角的になったミルキーバーを示して苦しそうに言った。

「ミルキーバーが扁桃腺に刺さった…。」

彼は扁桃腺肥大だった。私はコドモのころ図鑑で扁桃腺肥大を知って以来、実物を見てみたいと強く願っていた。憧れてすらいた。チャンス到来。懇願してM君のお口の中をのぞかせてもらうことに成功した。立派な扁桃腺肥大であった。S君、YちゃんもついでにM君のお口をのぞきこみ「おお。」と控えめな歓声を上げていた。あの日「あーん」してくれたM君の大きな扁桃腺とM君自身の幸運を祈ってやまない。