長生きの諸悪の根源とめぐり会った日から三十一年

 

☆「こんなになっちゃって、すまないね」と、若き日の自分に謝りたい。バカのように長生きしたことを詫びたい。同時に、いま現在の自分にも謝りたい。

詫びたところで煙のように消えることができるわけでもないが。

 

☆手もとに十九歳のときの写真がある。夏の海で陽光浴びて風に吹かれて、少しすました微笑を浮かべこちらを見ている。この写真を発見したとき、私はうれしかった。自分にもこうしたぴちぴちとまぶしく「可愛い」時代があったのだ。

もちろんアイドルのようなレベルで可愛いわけではないが、べつにかまわない。生まれつき老人ではなかった証拠があればそれでいい。

だからなおさら、音楽にのめりこむ前に、ぴちぴちのままこの世を去っていればと思わずにはいられない。

 

☆さっき、自分が死ぬ夢を見た。淋しかったがせいせいした気持のよい春のような夢だった。

この老人は一日も早く世を去りたいと思っている。音楽に楽しく邪魔されながら。