音楽

SOMEDAYを聴けば

☆あれは十七歳の初夏だった。当時つるんでいたYがたまたまくれた佐野元春の「NO DAMAGE」のカセットテエプをいたく気に入り、くる日もくる日も聴いていた。 ☆「NO DAMAGE」を聴くうちに秋が来た。秋の夜は早く始まる。私は夜を待っていた。街のネオンサイン…

長生きの諸悪の根源とめぐり会った日から三十一年

☆「こんなになっちゃって、すまないね」と、若き日の自分に謝りたい。バカのように長生きしたことを詫びたい。同時に、いま現在の自分にも謝りたい。 詫びたところで煙のように消えることができるわけでもないが。 ☆手もとに十九歳のときの写真がある。夏の…

八月から来た男

☆一九八九年八月の初め、私より三つ年下のKを、そして私たちを、或る不幸がとつぜん襲った。 ☆それから何日かたった夜明け、私と同い年のGちゃんは、私たちの車の後部座席にラジカセとともに乗り込み、私たちの町へとやってきた。 白いTシャツ、ブルージーン…

或る夏の記憶

☆28年前の今日、友人Kが交通事故で世を去った。 知らせを受けても実感が湧かなかったが、なにしろ大変なことが起きたらしいことはわかったので、いてもたってもいられずKの住む街へと車を飛ばした。 何人かで連れだって、真夏の夕刻、黒いスーツを着てお通…

民放FMラヂオデイズ

☆中学生のとき、地元で初めての民放FMが開局した。やっと与えられた個室で、やっと買ってもらったステレオ式の「ラジカセ」を、夜は枕元に置き、休日の昼間は窓ぎわなどに移動させ、欧米の音楽、古い音楽、ニュース的要素の強い情報番組など、むさぼるように…

記憶の遠近感

☆むかしむかし、秋から冬にかけて毎年来ていた、 「焼芋っ。 一個百円っ。 焼芋っ。 一個百円っ。」 の焼き芋やさんのおじさんの呼び声がなつかしい。 このおじさん、夏場は夏場で、 「甘〜い甘い、 スイカに、 メ ・ ロ ・ ン ♡」 の声とともにやってきたも…

家庭内ロックンロオラア誕生前の長い夜の始まりの日

☆30年前の今日、私の人生の中心がロックンロオルになった。ある人物に出会い、魅力的なロックンロオルを浴びるように聴かせてもらい、それらを片っ端から気に入って四六時中聴くようになったのだった。まるで水をぶっかけられたスポンヂのごとく、「あ!」と…

はじめての夜道のひとり歩きのこと

☆あれはおそらく中学一年の夏休み、近所の盆踊りの夜に人生初の「夜間外出」の許可がおりた。独裁者気取りの両親の気まぐれだ。 ☆私は夜の外出に憧れていた。夜に関する知識といえば、黒い空に月と星があることくらいだったが、それ以外の「夜」も見てみたか…

こんな夢を見た

☆夜A ◆故郷の小学校を訪ねると高学年用の玄関が図書室になっていた。下駄箱はすべて本棚に置き換えられ、机も椅子もなく床に座って本を閲覧するスタイルだった。 ◆遠くに住む一つ年上の友達・Kちゃんがランドセルを背負ってはるばるやってきた。私は彼にネ…

清志郎がぶっ飛ばした夜

☆忘れもしないあの騒がしい夜のこと、開口一番、彼は叫んだ。 「相変らず人口少ねえな、旭川!!」 そして 「コドモいっぱい作れ!!」 と続けた。 RCサクセションが “来日” しているというのに大ホオルの客席の半分以上はなんと無人だったのである。 当時まだ小…

追憶の電気猫

☆電気猫という名の小さなライヴハウスに週末ごとに通っていた時期がある。中年のころだ。苦手な夜道の一人歩きをしてでも通いたかった場所だった。 ☆小さなフロアにでかい音。演者の執念がいろいろな形で炸裂して熱気を生むのが興味深い。音楽的にストライク…

T. REXと私

☆あれは18歳の夏のこと、私はT.REXの『THE SLIDER』のレコードを手に入れた。Janis Joplinの『Pearl』もいっしょに買った。 ☆家に帰ってカセットテエプに録音し、くり返し聴いた。ジャニスのほうはすぐに好きになったが、T.REXのほうは何度聴いてもピンとこ…