むかしむかし

老人と犬

☆この町に住み始めたころのこと、午後四時前後だったろうか、ジャージを着てチロリアンハットのような帽子をかぶったおじいさんが毎日のように家の前の道路を通りすぎていった。 おじいさんは小さめの歩幅でゆっくりと歩いた。あまり脚がよくないらしい。お…

記憶の遠近感

☆むかしむかし、秋から冬にかけて毎年来ていた、 「焼芋っ。 一個百円っ。 焼芋っ。 一個百円っ。」 の焼き芋やさんのおじさんの呼び声がなつかしい。 このおじさん、夏場は夏場で、 「甘〜い甘い、 スイカに、 メ ・ ロ ・ ン ♡」 の声とともにやってきたも…

若気の至り(若き野郎ども篇)

☆とあるお正月、地元の百貨店の地下通路のベンチで休憩していた。そこを通りかかった中学生男子二人組。一人が鞄から空のペットボトルを取り出し「ぜんぶ飲んじゃった…。」と相手に見せた。見せられたほうはさっそく鞄をごそごそし、自分のペットボトルのお…

萌え萌えと、女装できないおばあさんの明日

☆十年ほど前の話である。市中心部の横断歩道を渡っていたところ、男子高校生らしき声で「もーえー!!」と叫ぶのが聞えてきた。どうやら自転車を飛ばしながらのようだった。その場で膝小僧靴下(いわゆるニーハイ)を着用していたのは私ひとりだったから、も…

家系病はオカルトの病(笑)

☆私の母は幼少のころエクソシストのお世話になったことがある。普段は食の細い彼女が、食べても食べても強烈な飢えを感じてひたすら食べ続け、その様子を不審に思った彼女の祖母(つまり私の曾祖母)が知り合いのエクソシストのもとへ連れて行ったのだった。…

若気の至り

☆女子高生のA子ちゃんとB子ちゃんが雑談していて、A子ちゃんがC子ちゃんの兄をさりげなく「アーニー」と称していると、B子ちゃんが「C子ちゃんのお兄ちゃんて外人なの?」と真顔できいたという話をA子ちゃんがしていたのは30年ほど前になる。私がA子…

カラスの群れと鉄砲撃ち

☆田舎暮らしをしていたコドモのころのこと、自宅の正面からまっすぐ延びる道路の行き止まりに養豚業を営む同級生のY君の家があった。 ☆ある日、Y君宅の屋根の上をおびただしい数のカラスがぎゃあぎゃあ鳴きわめきながら飛び回るのが見えた。ときおり変な音…

蜂蜜やさんと花とミツバチ

☆私との続柄は不明なのだが、むかしむかし、親戚に養蜂業を営む男性がいたそうだ。そのひとが亡くなったとき、お葬式に複数の見知らぬ若い女性が小さなコドモを連れて現れコドモを認知してほしいと言い出し、親戚一同仰天したという事件があった。けっこうな…