蜂蜜やさんと花とミツバチ

☆私との続柄は不明なのだが、むかしむかし、親戚に養蜂業を営む男性がいたそうだ。そのひとが亡くなったとき、お葬式に複数の見知らぬ若い女性が小さなコドモを連れて現れコドモを認知してほしいと言い出し、親戚一同仰天したという事件があった。けっこうな高齢で亡くなったその男性から見ると孫のような年ごろのコドモたちであったという。もちろん現実問題としてシャレにならないわけだが、なんだかドリフのコントのようで、私の好きな話である。

☆養蜂業者は蜂蜜を採取するため季節ごとに花のある場所を転々とする必要があるが、その移動の際、いわゆる「港々に女」という状況になっていったものと思われる。あっちでぱらぱら、こっちでぱらぱら、自分のタネを撒いては子孫を増やすのに余念がなかったというか、そういうことの好きなおじいさんだったのだろう。もちろん、相手あってのことだから、ちょっと様子がいいとか、異性に優しいとか、話が面白いとか、なにか魅力のあるひとだったとも考えられるが、なにしろもののない時代のことだから単に蜂蜜で女のひとを釣っていただけかもしれない。

☆まあ、いまとなってはわからないことだらけであるが、親戚にこういう喜劇的なひと、堅気ではない人物がいたというのは面白い。しかしお葬式は紛糾したことだろう。コドモの認知などというこみいった話を誰がどのようにまとめたのか、あるいは誰も何もまとめなかったのかまでは、残念ながら私は聞いていない。