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てふてふとさなぎ

☆「クラスに一人はいる未熟児みたいな男子」という言い方をした男の人がいた。雰囲気はわかるし、初めて聞く表現でもあったので、私は反射的に笑った。しかしそれが明らかな侮蔑をも表していると気づいたとき、笑ったことを後悔した。

 

☆私はあまり学校へは行っていないし、学校でもどちらかというと浮いた存在だった。そういう「学校向き」でないコドモではあったが、席替えでどんなコドモが隣りにきても必ず話しかけるコドモであった。誰も声を聞いたことがないほど無口な男子にも、委細構わず話しかけた。さぞや迷惑なことだったろう。もちろん「未熟児みたいな男子」にも普通に話しかけた。優等生にもである。ヤンキーや体育会系は放っておいてもぺらぺら喋っていた。

 

☆小さなころから、クラスで目立つコドモよりも、おとなしくて目立たないコドモのほうが、意外と趣味の世界に生きていたり、温厚で話しやすかったりして好きだった。そういうコドモを発見するたび「人って、第一印象じゃわからないものだな」と感じ入ったものだった。

 

☆中学一年のとき、たまたま席が近かったS君は、内気でおとなしい少年だったが漫画が好きで、私も大好きだった『マカロニほうれん荘』で盛り上がると彼はにこにこ笑い、静かだが饒舌になった。何のきっかけか、むかしの漫画の話になり、私が「見てみたいなあ」と言うと、翌日の朝、貴重な『のらくろ』や『クリちゃん』『フクちゃん』を惜しみなく貸してくれるのだった。むかしの本なので、傷めないように扱い、緊張してそうっと読み、翌日には返却した。そういえば彼はフクちゃんに少し似ていた。

 

S君は「未熟児」ではなかったが、日々成長を続ける少年たちの中では少しだけコドモっぽいほうだったかもしれない。だが、もの静かで親切に楽しく接してくれた。男女交際はなかったが、とても好ましい人物だった。いまでも古い漫画の記憶はS君の記憶と結びついている。

 

☆人間を派手な外見や雰囲気などで選ぶのもわるくはないが、あまり目立たない控えめな人物に焦点を当てると愉快なことが待っている可能性が高い、というのがいまでも私の持論だ。