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若気の至り(若き野郎ども篇)

☆とあるお正月、地元の百貨店の地下通路のベンチで休憩していた。そこを通りかかった中学生男子二人組。一人が鞄から空のペットボトルを取り出し「ぜんぶ飲んじゃった…。」と相手に見せた。見せられたほうはさっそく鞄をごそごそし、自分のペットボトルのお茶を差し出してぼそっとひとこと、

「粗茶だけど…。」

それを聞いた瞬間、私は彼らとお友達になりたいと強く思った。

 

☆小学四年生男子がお風呂のお湯に浸かり「〽︎時には娼婦のように〜」と真剣に唄った。

次の瞬間、いっしょにお湯に浸かっていた母ちゃんに後頭部をすぱーんと叩かれ「もっとコドモらしい唄、唄いなさい!!」と叱られた。

のちに彼は、「テニス」に誘われているのに「は? ペニス? は? ペニス?」と真顔で聞き返したり、どこかで覚えた「コケティッシュ」という言葉を「 ” コケ ”  で  ” ティッシュ ” 」だからすごくすけべな言葉にちがいないと勝手に解釈したりするオトナになった。人間は変化する。しかし人間は変化しない。

 

☆とある住宅街でのこと。古紙回収のトラックが通りすぎたところに小さな坊やがひとり、道路に飛び出して叫んだ。

「おじちゃーん!」

その声は古紙回収のおじちゃんに届いた。おじちゃんは親のおつかいかもしれないと思ったのかトラックを止めた。ミラー越しに坊やを見て、バックする態勢に入っていたかもしれない。

そして坊やは手を振り力強く叫んだ。

「ばいばーい!」

おじちゃんはそのまま走り出した。

 

☆ある夜のイトーヨーカドーでのことである。二歳になるかならないかくらいの坊やがカートに乗せられていた。カートが女性用下着売場にさしかかったとき、陳列された大量のぶらじゃを発見した坊やが、よく通る大きな声で「ぉぱーい!」と叫んだ。坊やは止まらない。可愛い声で楽しげに「ぉぱーい!」「ぉぱーい!」と激しく連呼する。あたりにはほとんどひとはいなかったが、カートを押すいかにも若くて真面目そうなお母さんは表情を硬くしてものすごい早歩きで通りすぎて行った。子をもうけると大変な出来事がさぞやたくさん起るのだろうと、笑いを堪えながら世のお母さん方の苦難を思い、自分にコドモがないことを改めてありがたく思った夜だった。