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こんにちわ、シネマ倶楽部

☆のちに「遊興団体」(笑)と化したシネマ倶楽部は、自主映画の監督Kちゃんが作った、もともとは映画を作るための集団だった。

☆二十歳そこそこの私が某バンド(もちろん無名)に在籍したとき、とあるハコによく出入りしていた。Kちゃんはそのハコのスタッフだった。知り合いではなかったがお互いの存在は知っていたと思う。

☆当時、なぜか私は自分と似た髪型の人を探していた。同類や仲間を求めていたのかもしれない。しかしどこにもいなかった。バブルの時代にマーク・ボランのようなカーリーヘアーの人間は絶滅していたのだろうか。

☆そこに流星のごとく現れたのがカーリーヘアーのKちゃんだった。おまけに彼は夢のような美しい容貌の持ち主だった。

☆ハコの仕事でチケットをもいでいる彼を物陰からじいっと見たことがあった。出歯亀している私の頭のなかは空白である。人ひとりの頭をパーにさせるほどの美しさだ。絶対にお近付きになろう、と心に誓った夜だった。

☆冬の午後、ステンシルしたり焼いたり切ったり貼ったりして自分のバンドのライヴのポスターを作り、ハコの通路に貼ってくれるようわざわざ一人で頼みに行った。もちろんお目当てはKちゃんである。

行ってみるとハコの事務室からなにやら、カチャッ、カチャッ、と間を置いた変な音が聞えてくる。ドアが開いていたのでそうっとのぞいてみると、机に向うKちゃんの後ろ姿があった。が、豊かな巻き毛で手元は見えない。「あのー…。」と声をかけると、「あ〝。」とかなんとか言って振り向いた彼の手元にはワープロがあり、例の間を置いたカチャッ、カチャッという音はタイピングの音であることがわかった。

☆彼は私がいつも作るポスターやらチラシやらをまとめて褒めてくれたうえ、彼がこのハコで催す上映会のチケットを4枚、バンドのメンバーの分までくれた。紫色のチケットには黒インクでジミヘンが印刷されていた。

☆これがKちゃんと私との(少なくとも私にとっては)運命的な出会いである。二人とも、まだ鼻血が吹き出るほど若かった。