競馬のない人生は影のない馬

☆20年来の競馬好きだが、わけあって何年か競馬断ちをしていた時期があったため、それ以来いまだに浦島太郎状態から抜け出せずにいる。

それまで競馬の本を月に数冊買って熟読していたのが、本も読まない、競馬中継(これもなつかしい言葉になってしまった)も見ないのだから、そりゃあ重症の浦島太郎にもなるだろう。

なにしろ好きな馬はシービークロスタマモクロス、お気に入りのレースはツインターボオールカマー七夕賞ブロードアピール根岸ステークス等々、情報はなかなか更新されず、毎年のクラシックは勝った馬の名前すら覚える間もなく過ぎてゆく。

超大物のいない現在、馬の名前も顔も覚えられない。勝負服もずいぶん忘れた。玉手箱のふたは開けっ放しである。

☆それでも週末ごとに競馬をテレビ観戦すると、何となくいい。いちばん好きなのは、GⅠで馬群が4コーナーを廻ってからゴールするまでだ。

馬の気合い、ジョッキーの執念、馬券を買った人たちの煩悩にまみれた歓声などといった独特の「何か」が、小さなテレビの画面とスピーカーから伝わってくる。その瞬間、私の背筋はざわざわっと騒がしくなる。

☆GⅠではないけれど、この週末も競馬を見よう。テレビの競馬番組は確実につまらなくなってきてはいるけれども、それでも競馬をテレビ観戦しようと思う。しゃべるのがだいぶ上手になったアンカツさんの解説も愉快だし、毎度あまり当たらない予想を展開する井崎氏など、顔を見ているだけでうれしい。やはり私の人生には競馬があったほうがいい。