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清志郎がぶっ飛ばした夜

☆忘れもしないあの騒がしい夜のこと、開口一番、彼は叫んだ。

「相変らず人口少ねえな、旭川!!」

そして

「コドモいっぱい作れ!!」

と続けた。

RCサクセションが “来日” しているというのに大ホオルの客席の半分以上はなんと無人だったのである。

当時まだ小娘だった私はそのおかげで知人からタダ券を譲り受け、5列目あたり、ほぼ中央の席に立つことができた。そして「今宵の空席埋めるには手遅れだけれど、この場で一斉に繁殖始まったら面白い!」などと酒ビン片手に上機嫌なのだった。

肉眼で5分以上見つづけると白内障になりそうなまぶしいステエヂで、厚化粧もまばゆい彼は、いずこからともなく飛来したセクシイおぱんつを頭にかぶってお帽子にしたり、ひっくり返っておけつからクラッカアを発射したり、愉しさの四十八手をさんざっぱらやり尽くした挙句、ショウを終えた。

「夜をぶっ飛ばせ」を正しく具現化すると、ああなるのだな。いまでも私はそう思う。

愉しかったライヴのあと、物足りなさや終ってしまった淋しさが残るとたまらなく嫌なものだが、夜を100%ぶっ飛ばすと物足りなくも淋しくもなく、嫌な気持はどこにもないのだ。あれはほんとにいい夜だった。

いまとなってはタダ券をくれたのが誰かも、あの日の曲目も、自分が着ていた洋服も、飲んでいたお酒も、何ひとつ覚えてはいないけれど、とにかくものすごく愉しかったということだけは記憶に焼きついている。こんな記憶はめずらしい。

 

☆下品で可愛くシャイで、素敵に愉快な痛快絶倫野郎が地球を去る日が来るとは、考えてもみなかった。

今でもまだちょっとわからないままである。