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カラスの群れと鉄砲撃ち

☆田舎暮らしをしていたコドモのころのこと、自宅の正面からまっすぐ延びる道路の行き止まりに養豚業を営む同級生のY君の家があった。

☆ある日、Y君宅の屋根の上をおびただしい数のカラスがぎゃあぎゃあ鳴きわめきながら飛び回るのが見えた。ときおり変な音も混じってなかなかの大騒ぎである。そばにいた父に「Y君のおじさんはカラスを集めているの?」と訊くと、カラスが多すぎるから散弾銃で撃って殺しているのだといったような答えが返ってきた。たぶんそのあとは例によって散弾銃についての説明が繰り広げられたのだと思われる。

☆もともとY君の父親は近所の牛飼いのOさんと仲がわるかったらしく、大げんかの果てに鉄砲の撃ち合いにまで発展したこともあったという、どうも血の気の多い人物だったようだ。牛飼いのOさんは後に飼っていた牛の角で腹部を突かれ亡くなり、牧場は廃業を余儀なくされた。

☆近所だったせいもありY君の家へは一時期、何度か遊びに行ったことがあったが、二三歳年上の意地悪なお兄さん以外の家族には会った記憶がない。そうこうするうち私はY君の家へは行かなくなっていた。なんだかお友達づきあいに疲れてしまったのだった。

☆あの田舎には鉄砲撃ちが多かったのか、細い丸太を組んだ足場のようなところにカラス除けと称してカラスの屍体がいくつもぶら下げられていたり、猟銃自殺したりしたひともあった。田舎の景色はのどかだが、人間のほうはそうでもなかったらしい。