彼女がいた夏
☆二度目の夏祭りが終ったあと、七月末に身内の者が帰省した。
彼女は例によって嵐のように登場し、毎日をお祭りのように過ごした。「ひとり帰省ラッシュ」である。
食いしん坊だが小食で、食べるとすぐに眠くなり目が半開きになる仔猫みたいな人だ。
我が強く、気も強く、行動はスピーディーでまめに出かけてせわしない。ちびっこ爆弾のようなところもむかしからあまり変らず、いっしょにいるとくたびれるのだが、いないとなるとなんだか淋しい。なんともいえない輝きと可愛げがあるのだ。私とは正反対のタイプといえる。
☆私はコドモのころから「別離の雰囲気」が嫌でたまらない。幼少時、観光地に暮らしていたせいで見知らぬ親戚がよく訪ねてきたが、彼らをお見送りするときさえ私はしくしく泣いていた。知らない人のお見送りなのにである(その様子を「可愛い」と写真におさめた鬼畜な父もたいがいなのだが)。
だから彼女が帰るときは絶対にお見送りをしないと決めている。
まあ、見送られるのもたいして楽しいものではないだろう。
☆さて、タチアオイの写真も撮った。花火大会も済んだ。彼女も一週間ほどで嵐のように帰って行った。こうやって夏が一つ一つ片付いてゆくのは毎年のことではあるが、毎年々々淋しく思う。暑いのが嫌いなくせに夏のイメエヂだけは好きなのだ。夏が逝くのを惜しむのは、世界からまぶしさが失われてしまうのが嫌なせいかもしれない。若いころはこんなことはなかったから、この傾向は老人病みたいなものなのだろう。
☆しかし夏の本番はおそらくこれからなのだった。