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あなたと私の境界線

☆「俺、気持いい=お前、気持いい」という破壊的な誤解がこの世にはある。

☆そのおかげで、私は性交で汗をかいたことがなかった。相手は海のような大汗をかいているが、私の躯は冷たく、寒いくらいが普通で、それに気づいた相手は不思議がった。早く終らないかと時計を眺めて退屈している女が汗などかくはずもない。

みなさん、見事に自慰のような性交をくり広げていた。ご自分の性慾に夢中で、まさか私が退屈しているとは夢にも思わなかっただろう。人類のすけべ心に落ち着きを求めても無駄だし、適当に相手に合わせて下手な芝居をしていた私もいけなかったのだとは思う。結局どうでもよかったのだ、性交など疲労を生むお遊戯でしかなかったのだから。

お遊戯がやっと終ったと思ったら今度は「いった? ねえ、いった?」というバカバカしい質問を何度もされてうんざりする。それなのに何度も交わる私がわるかったのだ。人間の腕まくら目当てに性交などしなければよかった、ただそれだけの話だ。若気の至りと軽蔑していただきたい。

☆自分と他人を区別するのは簡単そうでむつかしい。全世界が自分であるかのように感じるおめでたいひとも中にはいるかもしれない。自分のものは自分のもの、彼のものも彼女のものも、きみのものもあなたのものもお前のものも自分のもの。そして自分がそんなふうに感じているとはきっと思っていない、そういう迷惑なひとだ。

☆ある時期から私は自分と他人との間に太くて濃い線を引くのに必死だ。これは自分に課した義務である。相手が親しい友達でも、いや、親しければ親しいほど、太くて濃い線を必死で引く。何なら段差もつけたい。この境目はとにかく必要だ。

☆成長の段階で迷惑なオトナたちと接してきたためか、私はこの線引きには非常にうるさい。親切な顔で迷惑なことをしてくれるひとが大嫌いだから、自分もそうならないよう必死なのだ。ちゃんとできていればよいのだが。